見つめ合うたび、触れるたび
『わー、夜景すっげー!』
・・・なんてことを大はしゃぎで言いながら、高級ホテル最上階からの絶景に大興奮する。
そんな姿を思い浮かべていたのだけれども。
五関の予想は半ば裏切られた。
けれど確かに想像しようと思えばできたことでもあった。
「・・・おい、重いんだけど」
「んー・・・だめ、むり」
「なにが」
「ガマンできない」
「お前な・・・」
「今、めっちゃくちゃしたい」
「本能のままだな」
「五関くん、しよ」
「はいはい・・・」
部屋に入るや否や、押し倒される勢いでベッド上で乗っかられ、その細い両腕にしがみつかれた。
肩口の辺りにその茶の髪がふわふわとくすぐったい。
五関は口ほどには呆れた様子もなく、しがみついてくる河合の頭を片手で軽く撫でてやる。
こういうのは何も初めてではないからそれなりに慣れている。
普段から好意を持った人間とスキンシップを図るのが好きな河合だが、ステージ後はテンションでそれに拍車がかかるらしく、必ずと言っていい程こうして誘ってくる。
そしてそれはもはや誘うなどというレベルではなく、下手をすると食われそうな程だ。
特に今回のステージは普段のようにバックではなく、自分達が主役の一角であったから尚のこと。
河合は暫くそうしてしがみついてからゆっくりと身を起こすと、横になったままの五関の上に跨るようにしてさっさと上着を脱いでベッド下に放る。
そしてすぐさま窮屈そうに下のシャツのボタンを外していく。
はらりとはだけて現れていく、染み一つないまっさらで締まった素肌はもう見慣れたもので、それはさっきの公演でも散々晒してはいた。
それを見ていると、河合が露出したがるのは、むしろそれが本来の姿だからなのではないかとすら思う。
そのくらい、その姿は綺麗だと思う。
・・・ただこういう時にそう躊躇いもなくさっさと脱がれると、若干情緒に欠けるとも思うのだが。
「お前、いいの?」
「ん・・・なにが?」
「折角の最上階スイートなのに、堪能しなくて」
「・・・後でいいや」
「あ、そ。じゃあシャワーは?」
「入った方がいい?」
「いや、お前がいいならいいけど」
「いらない。五関くんがいればいい」
「・・・」
躊躇いもなく言ってくれる、と思う。
余裕がないせいなのか、意識がそれ一点に集中しているからなのか、それとも本能をさらけ出しているせいなのか。
こうしてステージ後に誘ってくる時の河合は普段のような軽口をあまり叩かない。
決して照れや羞恥がなくなるわけではないのだが、それよりも純粋に特化された欲求が勝るのだろう。
その鋭い黒目がちな瞳はこんな時、見下ろしてくる角度のせいもあって、やけに冷たく見える。
こんな時の河合はまるで猫科の獣のようであるといつも思う。
鋭い瞳にしなやかな身体にどこか底知れなさのある視線。
中身は完全に犬科だろうけれども。
「・・・五関くん?」
「ん?」
「俺脱いじゃったよ?」
どこかおかしそうにそう言ってシャツもベッド下に放る。
更には腰のベルトを緩めて抜き取りながらうっすら笑う様は、まさに自分を誘い出そうとする顔だ。
それに五関は小さく思案するような表情を見せてから・・・ふっと唇の端を上げて笑んだ。
相手がここまで強気に出てくれるなら、自分もそれなりのやり甲斐があるというもので。
「俺は脱がなくてもいいよな?」
「・・・なんだ、脱がないの?」
「お前さえ脱いでれば十分できるし」
「なにそれ、つまんないの。脱げよー」
そう言って心なしか唇を尖らせて、シャツの胸の辺りを引っ張ってくる手を逆に掴んで引き寄せる。
それに自分の指を絡めて、自分のものごとその指に舌を這わせる。
さすがに予想しない動きだったのか、河合は小さく肩を震わせて反応した。
下からそれを見上げるようにして眺めつつ、指と指の間を辿るように更に舐める。
それに抵抗するでもなく、けれどその微妙な感覚に耐えるように眉根を寄せつつ、煽られたように小さく顎を反って息を吐き出す。
現れる首筋のラインと、唾を飲んだ時のその動きがよく見える。
更に舌を這わせれば、微かに漏れる吐息混じりのハスキーな声。
「っ、・・・動きが、エロい」
「そりゃお前だよ」
「・・・やる気になった?」
「ないとは最初から言ってないけど?」
濡れた音がする。
自分の指と河合の指が混ざるように濡れるのが見えて、そこで五関はようやく口を離した。
すると外気に触れてひんやりとした感覚に、河合は緩く目を瞬かせてそのまま身を屈める。
吐息がかかる程の間近で見ればよく判る。
理性的なフリをして、そのくせ深い色の瞳の奥に確かな欲を覗かせている様。
河合はそんな時の五関が言いようもなく好きだ。
そんな姿は絶対に自分の前でしか見せないだろうから。
ただ、どうせなら最初から出せよ、とも思うのだけれども。
「ずるい・・・」
「なにがだよ」
「いっつも、俺から、させて」
「言いがかり。俺からの時だってあるし。・・・そもそもお前が先に乗っかってくるからだろ」
そう言ってまるで犬か猫にするみたいに、その濡れて冷えた指で顎の下辺りを撫でてくる。
それに河合が喉を鳴らして目を細めれば、なんだか妙に楽しげに笑ってみせる。
もしかしたらそれは男として屈辱的なことでもあるのではないかと、河合はたまに考える。
そういう顔をする時の五関は、その後割と冗談ではなく容赦がないからだ。
一体どんな経験をしてきたのかと若干気になる程に。
もちろん普段は十分すぎる程に優しいと思うのだけれども。
まぁこういう時は大抵自分もサカってるし、とそれなりに自覚はあるから特に問題はない。
むしろそうでなければ物足りない。
「ねー・・・」
「なに?」
「好きだよ」
「うん」
「もっと好きになって」
「なんだよ、それ」
すぐ触れられそうな距離で小首を傾げて、そんなことを真顔で言う。
五関は薄く笑いながら、うっすら開いた河合の唇を舌先で舐めてやって、それから軽く合わせる。
それに応えるように自分からも口づけると、河合はもう一度言う。
その手が五関のシャツの一番上のボタンを弾くように外した。
「もっと好きになってくれないとさ、」
「くれないと?」
「・・・そうなるように、食っちゃうよ」
言ったら、思い切り笑われた。
けれどそれはなんだか愛しげに。
「なんだよ、食われたらそうなんの?」
「だって俺しか見えないようになっちゃうから」
「・・・・・・」
「・・・ちょ、なに笑ってんの?さっきから笑いすぎだしっ」
そんな一途な瞳に映されて、そんな風に稚い調子で言われたら、しょうがない。
だってそういうお前こそ、俺しか見えてないだろ、と。
言ったら更に拗ねそうだから言わないでおくけれど。
「じゃあ、・・・そうだな」
「なんだよう・・・」
「食われる前に、食うかな」
「・・・うん、そうして」
だから言われなくても、一秒ごとに好きになってる。
END
ジュニアコン千秋楽後のメリディアンホテル(会場)の最上階スイートでの五河というどうなの的設定。
拍手のメリディアン小ネタの後くらいな。
やる気満々な五河とか超萌えじゃないすかね、という感じで。
あんなキャッキャしてたのにいざ二人きりだとこんなんなってる五河萌えです(難儀な)。
というかもー、踊ってる五河のエロエロしさにたまらんことになって書きました(正直に)。
あのシンメ本気でエロすぎるからね・・・。
喋ってると二人して可愛くていっそ百合カプくらいな勢いかと思いきや、踊ってるのを見ると攻め×攻めなんじゃないの?とすら思う。
そのくらいの攻め気があってもいいと思うの五河!
そんなお互いやる気満々ガチバトルな感じもよいじゃなーい、という新境地。
若干途中逆っぽい空気もありつつ、でも河五ではなく(笑)。
フミトは五関さんのこと大好き過ぎるので勢い余ってこのくらいのやる気は見せていいと思います。
でもそこは五関さんなので、そんなフミトもにゃんこ扱いでダンディ見せつけて欲しいよね!ていう。
猫科の猛獣をにゃんこ扱いのダンディって素敵。
でも最後は結局純愛リリカルスキーらしく(そうだったんだ)、可愛くまとめてみました。
・・・あーそれにしても、ほんと自分五河好きすぎて気持ち悪すぎる。
(2006.9.3)
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