JEWEL










今日は先輩であるMAの主演舞台を見に行くことになっていて、五関と横尾は待ち合わせ場所で残る一人を待っていたのだけれども。
珍しく一番最後に現れた河合の姿を認めるや否や、二人は同時に軽く目を瞬かせ、顔を見合わせた。

「お待たせっ!」

その明るい調子と必要以上に大きな声こそいつものことだ。
けれども五関と横尾は、思わずその上から下までをまじまじと眺めてしまった。

「・・・お前、今日何しに行くの?」
「すげー気合入ってんなー・・・」

各々のそんな第一声に、河合はきょとんと不思議そうな顔をする。

「え?なに?なんかおかしい?」

二対の視線が集中する自身を改めて見るけれど、河合としては何がおかしいのか判らない。
そんな様子に二人は再び顔を見合わせると、五関は呆れたように息を吐き、横尾は小さく苦笑した。

「お前がステージに出るわけじゃないだろ」
「そうだよ。なんでそんなキメキメなんだよ」

もはや今さっき駅の改札から出てきた時点で浮いていた、と二人が思った、河合の今日の服装。
カッチリとした黒のスーツに白いシャツ、それに少し上等な黒の革靴。
髪もいつもより大人しめにセットしてあるし、何よりシャツのボタンが一番上まで留まっている。
肌を見せることがイコール男らしくセクシーで格好いい、と半ば本気で思っている節のある河合が、ステージ上での最後の挨拶の場面でもないのにそうしているのはある意味奇跡的とも言えた。
それはステージでなければ、どこぞのパーティーかセレモニーにでも出席するかのようなフォーマルな装いだ。
河合はスタイルはそういい方でもないし上背もないが、その分姿勢がいいし、何より彫りの深い整った顔立ちをしているのでスーツは意外と似合う。
あくまでも、黙っていれば、という注釈は付くが。
けれど下手に似合うからこそ、そうやって本気でかっちり決めてこられると、逆にそれに相応しい場所でないと浮いてしまうのだ。
事実、さっきから若い女性の視線がチラチラと時折河合に向いているのに五関と横尾は気付いていた。

「えー?なに言ってんの二人とも!」

しかし言われた当の河合は、言われてもなお自分がおかしいとは思わないようで、軽く眉を寄せると腕を組んで二人を交互に見やる。

「今日はMAの主演舞台だよ?MA先輩だよ?キメなきゃ!」
「だから、お前が出るわけじゃないだろ。お前がキメてくる必要性は皆無だから」
「むしろ主役さしおいてお前がそんなカッコしてどうすんだよ」
「そのくらい気合入れて見に来てんの。俺楽しみにしてたの。
ていうかね、二人こそなんでそんなカジュアルなの?ダメじゃん!」

スーツでフォーマルに決めている河合と比べて、五関と横尾はいつもと変わらない私服なので至ってカジュアルな装いだった。
それでも一応今日は観劇に行くということで、二人ともジャケットは着ているのだけれども。

「いや、普通だろ」
「そうだよ。普通じゃないのはお前」
「えー・・・。なんだよー、俺めっちゃ浮くじゃん」

二人を交互に見ては、河合はなんだか不満気だ。
一応、自分一人だけ違う雰囲気なのはなんとなくおかしいと思っているらしい。
確かに一緒にいても連れには見えない。

「まさかお前がそんな格好してくるとは思わなかったし」
「マジでお前めっちゃ目立ってんだけど」

五関と横尾は周囲を軽く見ながら、半笑いでそんなことを言う。
そしてそう言われると、さっきはまるで気にしていなかった河合も、段々と気まずくなってくるというものだ。
確かに、ついこの前母が「そろそろきちんとしたスーツくらい持ってないと困るわよ」などと言ってスーツ一式を買ってくれたのが嬉しかったせいもあるだけに、もしかして間違えただろうか、と思い始める。

「・・・そんなにおかしい?」

今更に小声で訊いてみる。
すると、二人は改めて河合を上から下まで眺めた。
河合はそれを待つように、内心少し緊張しながら黙ってじっとしている。
それから二人は軽く視線だけを交わした。

別におかしくはない。
周囲の視線が時折向くのは、むしろ目を惹かれるという意味でのそれであるのだし。
むしろおかしいとすれば、そういう意味ではなくて。

「というか・・・お前もね、やっぱジャニーズなんだな、っていうか」

そう楽しげに言うと、五関は時計を確認しながら河合を促して歩き出してしまう。
一方横尾はそれに頷くように笑うと、きょとんとしている河合の手を軽く掴んで引いて、五関と自分の間に河合を挟むようにして並ぶ。

「俺ら一般人には眩しいなー、ってことだよ」

そんな風になんだか妙に楽しそうな二人に挟まれて、河合はチラチラと交互に二人を見てはやはり判らないとばかりに目を瞬かせ、首を捻る。
そういう表情をしていると、いつもの河合なんだけど・・・と二人は密かに同時に思う。

「・・・なにそれ?ていうか五関くんも横尾もジャニーズじゃん?それ全然褒められてる感じしないよ?」
「うん、別に褒めてはないから」
「お前は相変わらず判ってないなー、ってだけ」
「・・・ますますわかんねー。ちょっと、二人だけで解り合わないでよ。おれ仲間はずれじゃん!」

結構なナルシストでバカみたいに人目を気にするタイプのくせに、判らないのが河合らしいと思う。
そこら辺は、その見た目に反して意外と純朴だったり擦れていなかったりするせいなのだろうか。

「いいよ、お前はわかんなくて」
「なにそれ!」
「そうそう、俺と五関くんだけわかってればいいよ」
「ちょっとずるい!」

それはまるで純度の高い宝石のような。










END






わたごちふみが三人でMA先輩舞台を観に行ったという超萌え情報を教えていただき萌え盛った挙げ句の果てです。
もーーーこの三人とか萌えすぎる!五河で横河!
しかもフミトがなんか一人でスーツとか来ちゃってキメキメちゃんだったらしいという凄まじい萌え。なに一人で頑張っちゃってんのあの子!(萌)
というわけで晃一さんと渉さんにはそんなふみきゅんを愛でてほしいなーという単なる願望&欲望です(告白)。
そして塚戸から散々ワイルド&セクシーと言われて「えっ?そう?」というような反応をしていたことからして、ナルでかっこつけな割に意外と自分の魅力をわかっていないフミトだと思うわけで。
・・・夢見すぎなのはわかってるよ!(わー)
(2007.1.6)






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