しつけはきっちりやりましょう










それはちょうど初日終わりの出来事。
グループの楽屋にはまだ塚田と戸塚は帰ってきていなかった。
いたのは、異様なまでにテンションが上がりきっている河合と、さすがに汗をかいて暑そうにしながらも特に平時と変わらぬテンションの五関だけ。

「始まっちゃったよ五関くん!そんでもう今日は終わっちゃったよ五関くん!」
「ああ、そうだね」
「たーのしかったねー!」
「ああ、うん」
「ねー!」
「うん」
「ねー!」

声がでかい。いつも以上に。
そしてやたらと距離が近いから余計にでかく聞こえるわけだ。
五関は顔を顰めてぼそりと呟く。

「・・・どうでもいいけど、」
「はいはい!」
「暑苦しいからひっつくな」

思い切り容赦なく言ってやる。
しかしこれが普段ならば、少しは拗ねたりしょげたりはするのだけれども、ステージ直後でテンションが突き抜けている河合にはあまり効果がなかった。
ソファーに座ってタオルで汗を拭う五関の肩に手を廻してきゃらきゃらと笑う河合は、離れるどころか更に顔を近づけて覗き込んできたかと思うと、あっけらかんのたまうのだった。

「あはっいいじゃんスキンシップしようぜ!」
「・・・ステージも終わったのになんで今更ここでスキンシップなんだよ」
「だって五関くんと絡めなかったしさ〜?」
「そりゃお前が来なかっただけじゃん」
「だって五関くん嫌がるじゃんか〜。後で怒るじゃんか〜」
「怒ってはないだろ」
「怒ってた怒ってた!ぜーったい怒ってた!」

翼くんのソロコンでしょー?この前のKAT-TUNのドームでしょー?あっ、それと演舞城もだ!・・・なんて。
指折り数えて、河合曰く「絡んだら後で五関くんに怒られた」という数々のシーンを羅列していく。
ベタベタとくっつきながらああだこうだと喋り続ける河合に若干の鬱陶しさを憶えつつ、五関はチラッとそちらを見る。

河合はステージの最後に着ていた赤いスーツを着込んだままだ。
けれどその上着も、加えてインナーの黒いシャツもボタンは一つもはまっていないし、ステージ終わりにキスマイのメンバーとテンションのままはしゃぎ合ったおかげで、右肩の辺りから二の腕にかけても無惨に脱げ落ちてしまっている。
それ故に、スッとしたラインの首筋から胸、締まった平らな腹から細い腰までが、何の布地にも遮られることなく物の見事にさらされていた。
よく人目に晒すだけあって全体的に均整の取れた美しいラインをしているとは思うが、五関からしてみればだらしのないことこの上ない。
そして河合が今言ったように「絡んだら後で五関くんに怒られた」という抗議の実体は、言った本人にしてみればここら辺にあるのだけれども、生憎と何回言ってもその真意はこの露出好きな恋人に伝わることはないのだった。

怒ってた怒ってたなんで怒るのー?としつこく連呼してくるのに、五関はいい加減眉根を寄せて小さく舌打ちする。
さすがにそれには気付いたようで、きょとんと目を瞬かせる河合の方に向き直る。
その眇められた目に河合は本能的にまずいと思ったのか、咄嗟に廻していた手を引いた。
けれど今度は逆に五関がその手を掴んで引き留める。

口で言って判らない相手には、実地で躾けるしかないのだ。

「ごせきくん・・・?」

掴んだ手を引いて、逆の手を晒された無防備な腰に廻して、その身体を抱き寄せるようにする。
それから身を屈めてそのお腹の脇、腰の辺りに顔を近づけて。

「・・・っひゃ!」
「なんて声出すんだよ」
「て、いうかっ、・・・な、なんで噛むっ・・・」

河合はあまりのことに声を上擦らせて狼狽える。
片手と腰とをがっちり固定された状態で、腰の辺りに思い切り歯を立てられたのだ。
途端走った小さな痛みに河合はなんとか空いた片手で目の前の肩を押しやろうとするけれど、いつの間にか体勢的にこちらの方が押されているような状態だからなかなかにままならない。
五関は少しだけ顔を離し、自分が歯を立てた辺りにうっすら痕がついているのを見て平然と呟く。

「いくら言ってもわかんないみたいだから」
「な、なにが?いくら言ってもって、俺なんも聞いてないしっ」
「・・・聞いてない、か」

呟くと、五関はもう一度同じ場所に歯を立ててやった。
河合はひゅっと息を詰めて反射的に目を瞑る。
押しやろうと手をやっていた肩を今度は逆に縋るように掴んでしまう。

「いっ・・・いたい、って、噛むなよっ・・・」
「少しは痛くしないとわかんないかと思って」

またちくんとした痛み。
けれど今度はその直後に小さく舌先で舐められた。
痛みと混じるぞくっとした感覚に河合は緩く頭を振る。

「なにが、・・・て、もう、やめてよ、痕ついたら明日のステージ困る・・・っ」
「・・・困れば?」
「なんっ・・・」

軽く突き放したような物言いになんとなく不安になる。
今日は絡まなかったのになんで怒ってるんだろう。
河合はそんなことを思って、また腰の辺りに感じた痛みに耐えた。

「そんなの見せなきゃいい話」
「なに、それ・・・ん、」

見れば僅かに赤くなった痕を軽く癒すように舐める。
ただそうは言ってもさほど大した痕ではない。
余程近くに寄らない限りは判らない程度のものだ。

生暖かい感触に吐息を震わせて、河合は目の前の肩を掴んだまま緩く瞬きする。
その身近に感じる浅い息。
五関はもう一度最後に小さく歯を立ててやると身体を離した。
親指の腹で僅かに濡れてしまった唇の端を拭うと、今自分が痕を残した辺りに、河合のはだけていたインナーの黒いシャツを上から被せ、丁寧にボタンを留めてやる。
そして平然とした顔で言って、自らは着替えるためにさっさと立ち上がった。

「明日は、前開けない方がいいよ」

河合は心なしか俯き加減で残された痕をシャツの上から緩くさすり、こくこくと何度も頷くしかなかった。










END






てへ!書いちゃった!
ジュニアコン二日目の衝撃的事件。フミきゅん初日にはだけすぎたらうっかり五関さんに怒られちゃいました事件(既に五関さんと断定)。
そりゃこんなことあったら次の日は前閉めてくるよね!っていう。
やー、いつになく五関さんがアレですいません・・・。今回はフミトより五関さんがアレです。アレ。
いやでも彼女があんな公衆の面前で露出しまくってたらそりゃしょうがないって!躾けないと!(ちょっと)
でも結局は何カ所かでは前全開にしちゃってたからね。勝手に自分判断ではだけちゃってたからね。
軽く痛い目見せてもやっぱりわからないおバカな子でしたという結論。

最近のうちの五河がSM一歩手前ですどうしよう。
(2006.9.3)






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