あの日、わかっていたこと。










ああ、あいつまだ16歳なんだっけ・・・。

レッスン室の壁にもたれかかってぼんやりとそんなことを思いながら、休憩時間という意味を判っているのか甚だ怪しい勢いで戸塚とはしゃぐその様を眺めていた。
すぐ隣にやってきた気配には気付いたけれども特にそちらは見ない。
彼もまた特に気にした様子はなく同じように壁にもたれかかってそちらを眺めているようだ。

「児童ポルノ法案の対象は18歳未満だよ」
「・・・いきなりなに」
「五関くんが犯罪者になる前に一応言っとこうかと思って」
「人をいきなり犯罪者呼ばわりか」
「だから、なる前にって言ってるでしょ〜」
「ならないから。ていうかそれは何の前提で話してる?」
「五関くんがあの子に密かにご執心、って前提で話してる」
「塚ちゃん難しい言葉知ってるね」
「ご執心?うん、実は今まであんま知らなかったんだけど。五関くんの今の様子を言うんだな〜って思ってちゃんと理解したよ」
「そりゃ一つ勉強になってよかったね」
「そうだね。否定しないのがこれまた意外でびっくりなんだけど」
「別に肯定もしてないけど」
「結構自覚はあるんだね〜」
「意味がわかるように話してくれる?」

今度は小道具を使った殺陣紛いをしてはしゃぐその様を視界に映しつつ、五関は隣をようやく見た。
塚田はニコリと笑ってわざとらしく右手の人差し指を立ててみせた。

「信頼をエサにするのは、お金をエサにするのと違って捕まりはしないけどね、って話」
「捕まりはしないけど、犯罪者って?」
「このままだとなりそうだな〜と思って」
「それは俺が手を出すことを前提に言ってるように聞こえるんだけど」
「そう聞こえるように言ってるからね」
「いい加減ひどい言われようだな」
「あはは、冗談だよ〜」
「いまさら言われてもね・・・」
「五関くんは自分からは手は出さないもんね。だから大丈夫〜」
「・・・それ、ますます聞こえが悪いと思うんだけど」
「なんで?俺は割と応援してるよ?」
「犯罪者予備軍なのに?」
「だからそれは冗談だってば」
「どうだか」
「むしろ楽しみにしてるよ〜」
「・・・楽しみ?」
「うん」

二人が眺めるその先で。
こちらに気付いたのか動きを止めて、呼び寄せるように手を大きく振ってみせる満面の幼い笑顔。

「あの子に本気ではまって、犯罪者にすらなれなくなる五関くんがね、楽しみ」
「・・・塚ちゃん」
「ん?」
「マジ性格悪いよ」
「あはは、そうかも〜」










END






タキツ春魂DVDのアンコ夢物語にて、今井さんのバックで踊るフミトのあんまりな幼さと可愛さにノックアウトされた勢いです。
あんなヒヨヒヨしたおさな美少年に手を出した五関さんがすげえと思うことしきり!
(2006.7.30)






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