7.ちゃんと知ってる










「りょーおちゃーん。一緒にかーえろー」
「きしょっ。黙って入って来れんのか」
「なにそれ。昨日黙って肩叩いたら、ビビるやろボケ、てどついたくせに。どないなん」
「うっさい、お前うっといねん」
「うーわ機嫌わるー。思春期まるだしやね、最近の亮ちゃんは」
「思春期言うな!おないやろが!」
「おないの割には身長差はどんどん開いていくいっぽ・・・・・・あいたっ!いたいーっ」
「・・・しばくぞコラ」
「もうしばいとるし・・・ほんま機嫌悪いなぁ・・・」
「ほんまうっさいんじゃお前。さっさと帰んで」
「はいはい。・・・あれやろ、どうせまたきみちゃんと喧嘩したんやろ」
「人の姉ちゃんをきみちゃん言うな」
「ほらやっぱり。俺がきみちゃん言うて怒る時は必ず喧嘩した時やもんね。わかりやすー」
「・・・忠義っ!」
「はいはい、判ったからそないキーキーせんで。話くらい聞いたるから」
「誰がそんなん頼むか。・・・だいたい、別に喧嘩とかやないわ」
「・・・ああ。そっか。亮ちゃんが一方的に怒って拗ねてほっとかれただけか」
「ええ加減シメるで」
「あんなぁ、そっちこそええ加減認めたれや」
「・・・お前に何がわかんねん」
「そらわからんけどね。少なくとも、亮ちゃんの言うてることが単なる子供のわがままやっちゅーことくらいはわかるで」
「なんやとお前・・・」
「やって。・・・きみちゃんはずっと、ずーっと、亮ちゃんに許してて言うてるやん」
「それは、」
「おじさんとおばさんが亡くなって以来、亮ちゃんのために高校中退して、グラビアアイドルやって。
そんで亮ちゃんにいくら責められても怒りもせんで、許して、て言うてるやん。認めてくれんでもええから許してって」
「・・・・・・」
「きみちゃんが可哀相やわ。亮ちゃんのために全部やってんのに」
「・・・ほんなら、俺は可哀相やないんか」
「え?」
「俺は可哀相やないんか。たった一人の姉ちゃんに自分のせいであんなことさせて。させなあかんくて。
姉ちゃんが裸みたいな格好で写真撮られてる間にも勉強勉強て。・・・どんだけきついかお前にわかるか!」
「亮ちゃん・・・」
「好きでやってんなら、まだええわ。正直俺はやっぱ嫌やけど、それでも姉ちゃんが好きでやるんなら、嫌やけどそれ以上は我慢する。
でも、ちゃうやん。姉ちゃん、あんなん好きでやってるわけちゃう。お前かて写真見たやろ?・・・姉ちゃん、一度も笑ったことあらへんねん」
「うん・・・せやな。それは俺も思うわ。きみちゃん笑うとほんまかわええのにな。全然笑わへんよな」
「あんなんやり続けたら、姉ちゃんは絶対に不幸になる。・・・俺は、そんなん嫌や」
「・・・なぁ、亮ちゃん」
「ん・・・?」
「亮ちゃんて、ほんまシスコンやんな」
「・・・・・・ああ?」
「まぁそんなん昔からやねんけど」
「ええ加減ほんまにシメられたいらしいな忠義・・・」
「せやからねぇ、いつかは伝わるて」
「え?」
「姉ちゃんを世界一愛しとる亮ちゃんの気持ちは、いつかちゃんと伝わるて。
そんできみちゃんがどうするかまではわからんけど。ちゃんと伝わると思う」
「・・・なんやねん。わけわからん」
「せやから頑張りや。・・・何をどう頑張るんかようわからんけど」
「最後は丸投げか」
「まぁまぁ」










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