それは存在の証明










ええ歳したオッサン二人が素っ裸でベッドの上。
そら説明しなくたってわかるやろ?・・・何しとったかくらい。
なぁ?そこのお嬢ちゃん。

でもそしたらいきなりヤツが起きあがってむっつりした顔で言いよった。

「煙草吸うな」
「あ?なんでやねん」
「吸うなって」
「吸わせろやー」
「あかん」
「オレの楽しみやねんぞストレス発散やねんぞー!」
「あかん!すばる、死んでまうで!」
「・・・はぁ?」

いきなり殺すなや。
なんやコイツ。
やりすぎて頭おかしくなったんか。

「死んでまうねん喉が!」
「・・・喉かいな」
「せやからあかん。吸うな」
「いきなりすぎや。なんやねん。もう昔っから吸うてるやんけ」

だいたいオマエこそそのまっちろい手に持っとるもんはなんや。
オレのより軽いけども。
けどオマエのは二本目やろすでに!

「やって思い出してん」
「なにを」
「村上が」
「鼻ゴリラがどうした」
「すばるの喉が死んでもーたらいややろ?て。言うとった」
「・・・あのゴリラは何を言うてんねん。アホか」
「ヨコから言うてやって、て言われた」
「あんにゃろ・・・余計なことを・・・」
「余計やないで。大事なことや」
「おま、今更やねんほんまに!
・・・それに、きっちりケアはやっとるから心配すんな。吸うたって歌はちゃんと唄うわ」

せやからいきなりそんなん言うなよ。
困るやんけ。
・・・せやから、マジ顔とかほんまやめてくれ。

「おまえはそれ大事にせなあかんねん」
「わかっとるわ」
「大事にしろや」
「わかっとるて」
「おまえの歌が好きやねん」
「・・・わかっとるから」
「すばる」
「ん」
「好きやねん」
「ん・・・」

わかっとる。
わかっとるわかっとるわかっとんねん。
でもオマエはわかってへんわ。

オマエが言うから。
コレを止められへんのやって。

もみ消した火の代わりみたいに口と口を合わせたら、どっちのなんだかも判らない苦い味がした。

オマエが好きだと繰り返すから。
大事にしてくれと、大事だと繰り返すから。

せやから吸うのを止められへんの。










END






メモからの再録SS。
ヨコの憧憬にも似た愛情が時折どうしようもなくなるすばるさん。
自分を見ているようで何か違うものを見ている気がしてしょうがないという。
(2006.2.5)






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