愛染玩具 2










仕立ての良いベロアのスーツはきちんとハンガーにかけてある。
そこには合わせて作ったパンツも同様に下がっている。
肝心の成人式本番で着る前に皺にしてしまうのは避けたかったからだ。

部屋は十分に暖房が効いていて、シャツ一枚でも特に肌寒さはない。
だから微かな震えが来るのはきっと、ただ単にこの行為に未だ慣れていないだけだ。
四つん這いで屈めた身体を支えるように立てた膝、真っ赤なシャツの裾から剥き出しにされた白い太腿の内側が、微かに震えるのは、だからだ。
何度しても始めはどうしてもこうなってしまうだけ。
そしてその先の予感に身体が反応するだけ。
だからその内震えなくなる。そんな余裕もなくなる。
それもいつものことだから、河合はただそう思うだけだった。

暖房の効いた部屋には、乾燥を避けるために加湿器も置いてある。
そこら辺、部屋の主の健康への気遣いが窺い知れる。
個人の部屋に置く程度の小さな加湿器は、部屋の隅でほとんど音を立てずうっすらと湯気を吹き出していた。
薄白く揺らめいて溶けていくそれは部屋の空気をしっとりと湿らせる。
そのすぐ目の前のベッドの上では、その湿った空気に溶けるように、くぐもった声が時折聞こえる水音と共に漏れた。

「ん、・・・ふぅ・・・う、んぐ・・・」

鼻にかかったようなそれはハスキーな声を掠れさせる。
いつも周りに明るく向けられるその声を喉の途中で邪魔しているものは、熱く硬く主張しては、濡れて艶めく小造りな赤い唇を無遠慮にこじ開けているような格好だった。
含まれた口内の温かな粘膜と微かにざらついた舌の感触が、脈打つそれをまるで包む様に絡みつく。

「は、ぁふ・・・ん」

両膝を立て、前に身体を傾けるようにして、両手はくつろげられたジャージから覗く根元にキュッと添えられている。
男にしては小さなその手、その細い指先は、時折茎の部分を申し訳程度に擦り上げる。
けれどいかんせん口の方に意識が集中しているからか、それは辿々しいばかりで、いっそ稚い程だからこそ、妙に背徳的な空気があった。

「・・・ふぁ、・・・は、ふ・・・」

ゆったりと目を伏せたままの顔はすっかり紅潮し、触れただけで指先に熱が伝染しそうだった。
その行為に没頭しているせいか、それとも目を開けていることがいたたまれないのか。
ずっと伏せられたままのその瞼の縁を長い睫が彩り、その口元の動きと共に微かに揺れ、白い肌にできた陰影がぶれる。
そうして小造りな唇を窄めて軽く吸い上げた拍子、肩を掴まれたかと思うと、質量を増した熱の塊を喉の奥に当たるように腰から押し込まれた。
睫もその陰もその華奢な身体ごとびくりと揺れる。

「っん、んんっ・・・ぅ、う・・・」

自らの口の中にあるそれに揺さぶられるように、紅潮した顔を僅かに歪め、うっすらと目を開ける。
そこには常でこそ強い意志を秘めた鋭く煌く瞳があるけれど、今覗いたそれはまるで半分夢の中にいるようにぼんやりと霞み、暗い水底にいるように潤んでいた。
けれどそれでも口内にある熱の塊を吐き出すでもなく、そのしとどに濡れた唇をなおも窄めて吸い上げようとする。
そこで、少し短めに刈られた柔らかな黒髪にしっかりした造りの指が絡められ、上から撫でるようにふわりと手が置かれた。

「・・・かわい、きつい?」

上から降ってくるその声は、高めで、ふわふわと柔らかで、聞いていて心地いい程だった。
けれど問いかけられたということは、答えを求められているということ。
河合はその柔らかな声に従うようにゆっくりと口を開き、含んでいた熱の塊から顔を引く。
まだ開放するには至っていないそこから僅かに滲んだ白濁、それに濡れた唇の端を手の甲で無造作に拭い、膝を立てて腰だけを突き出したような前傾姿勢になっていた身体をゆっくりと起こす。

「だい、じょぶ。へーきだよ」

言葉を紡ぐために開けた口の中にはじわりとした苦味とねばついた感触がある。
それを唾と共に飲み込んで、河合は緩慢な仕草で潤んだ目を擦った。
すると、起こした身体、その無防備な腰に手が廻されてグッと掴まれる。
細い腰には厚みもなくて、思う以上に軽く引き寄せられる格好になる。
同じくらいの身長だからちょうど同じ高さで顔を突き合わせる形だった。
未だ潤んだ瞳に映る目の前の顔は、眩いくらいに満面で笑う。
それに河合がふと顔を綻ばせると、その笑顔がなんのこともなく近づいて、唇と唇が触れ合う。
そこにある温度や感情を確かめる程度の軽いキスだ。
冬で乾燥しているせいだろう、少し荒れてしまっていたその唇を、河合は離れていく拍子に小さく舌先を伸ばして舐めた。
すると塚田はまるで猫にでも舐められたようなくすぐったそうな表情でまた笑う。

「舐めるのうまくなったよね」
「ん・・・そうかな?」
「最初の頃はいつ噛まれるかわかんなくてハラハラドキドキだったけど」
「やー・・・ほら、人間日々成長ってやつだよ。やっぱさ」
「河合ももう大人だもんねぇ」

常ののんびりとした口調で言いながら、その唇がもう一度近づいて河合の細い顎先にちょんと押し当てられる。
けれどそんな可愛らしいばかりの感触とは裏腹に、その鍛えられた逞しい二の腕が河合の脇腹から掬い上げるように背中に廻って強く抱き寄せられた。
胸から腹、そして下腹部の辺りまでもが正面からぴたりと重なる。
同じくらいの身長だからまるで対のパーツが合わさるようなそれは、けれど体格の違いのせいでなんとも歪な対になっていた。
その厚みのある鍛えられた身体にそのまま呑まれるように、河合の華奢で薄い体躯が腕の中で微かに軋むように音を立てる。

「っん、・・・」

小さく漏れた声。
けれどその吐息はただ熱いだけ。
圧迫感が苦しいのではなくて、合わせられた身体からダイレクトに伝わってくる熱に疼くだけ。
さっき唾と共に飲み込まれた相手の白濁とした熱の欠片が、身体の奥でざわざわと蠢き、じわじわと心を侵食していくだけ。

「ねぇ、河合」
「ん・・・?」

可愛らしい声、といつも思う。
太陽みたいな眩しい笑顔で、可愛らしい高めの声で、ふわふわとした調子で、名を呼ぶ。
思えばそれだけは昔からずっと変わらない。
それに安堵させられていたのだと、今になれば思う。

「ねぇ、タッキーとのご飯、おいしかった?」

蜂蜜みたいな声だと思う。
耳元から身体の奥にドロリと入り込んでくるような、そんな蜜。
無防備に投げ出された白くて頼りない程に細い脚、そのきついまでに鋭い美貌とは裏腹に幼子のような感触さえ持つそれを、無造作に遠慮ない力で鷲掴みにされる・・・そんな感覚すらも全て塗りこめて見えなくさせるような甘い蜜。

「ねぇ、河合、教えてくれればよかったのに、ねぇ、俺も食べたかったな」

強く掴まれた右脚が軽々と持ち上げられて開かされる。
その言葉の真意を問い返す前にバランスを崩し、咄嗟に目の前の肩を縋るように掴んだ。
するとそれを合図にしたように塚田の身体が仰向けに倒れる。
自然、脚を鷲掴みにされたままに河合の身体は浮き上がり、その鍛えられた身体の上に載せられる様な格好になる。
下腹部だけが依然として密着したまま、互いに露出したままの性器がその拍子に擦れ合う。

「ぁ、っ・・・」

河合はそこから直に感じた熱の形に小さく息を呑んだ。
先程自らの舌と口内と喉とで追い上げ、形作られたその熱の塊は、開放一歩手前の状態で押し付けられている。
時折そのしっかりとした指に悪戯に触れられて同様に立ち上がりかけた自らのものに、それはゆっくりと確かめるように押し付けられ擦り上げられて、煽られるように鎌首をもたげる。

「つか、ちゃ・・・」

ずくずくと内側から疼かされる感覚。
押し付けられた腰がゆっくりと揺らめいたかと思うと、確かな力を持ってその硬い熱の塊で、上に載せた河合のまだ閉ざされた下の口をノックするように先端で触れる。
けれどまだ前戯も何もされていない状態では、それは到底受け入れられるはずもない凶器だ。
河合は反射的にこくんと唾を飲み込んで、その熱の塊を指先で愛撫するようにおずおずと指を絡めて触れる。

「まだ、ぜんぶできてない、よ?」
「ん?手でしてくれるの?」
「うん。口でも、手でも、どっちでもいいよ」
「う〜ん・・・でもねぇ、このままがいいかな、今日は」
「このまま、って?」

ぱちりと緩慢に目を瞬かせると、また眩い笑顔がニコリと向けられて。
その手が何かを手に取ると、はい、と軽い調子で河合に何か手渡した。
河合は反射的にそれを受け取る。
膨らませる前の風船のようなそれを、指先で摘んでは軽く引き伸ばしてみる。

「・・・ゴム?」
「そうそう、それはつけないとね」

のんびりとそう言って手渡してきたその意味は、河合の手でそれをつけろということだろう。
そしてこの体勢を考えれば、自分で挿れろという意味でもある。
口でも手でもなく、河合の身体に負担をかけないラインを引いた上で、その身体の中で熱を開放したいという意味でもある。

「なんか、新しい?これ。初めて見る」

河合はどこかぼんやりとした様子でそれを指先でいじる。

「そう、五関くんがね、これいいよって教えてくれたの」
「・・・あ、そうなんだ。オススメなんだ」

そういえばあの人はそういう細かい部分を気にするタイプだった、と河合は頭の奥でつい数日前のことを思い出していた。
そしてそんなことを思い出しながらも、そのコンドームの入り口から自分の指に被せるように突っ込んで、そのまま無造作に口に含んだ。
唾液で十分に濡らさなければ、そんな十分過ぎる質量を持った熱は受け入れられないから。
至極当然のような、そんな仕草。

「ん、ぅ・・・」

身体の上に載せられたまま、無機質な薄い膜の被せられた自らの指を舐める河合は、そっと目を伏せている。
下からはそれを楽しげに見ているであろう、ふわふわした声がまた聞こえた。

「ねぇ、明日言わない方がいいよ?」
「ふ・・・ん?・・・なに?」
「明日はトッツーだから。今日滝沢くんとご飯食べたって、言わない方がいいと思う」

そう言われて、あの黒目がちな大きな瞳が、いつまでも少年のように純粋なそれが歪められる様をなんとなく想像してみる。
そして同時に、ギターの弦を爪弾く大きな手が堪えきれぬように自分を押さえ付ける様も。

「・・・ん、わかってるよ。言わないって」
「トッツーはあれで結構ヤキモチ妬いちゃうからねぇ〜。相手はタッキーなのにね?」

くすくすと笑う顔は可愛らしい。
夜の匂いも欲望の欠片も感じさせないような顔。
けれど未だ下腹部に押し付けられている熱の塊は目の逸らしようもなく主張しては、河合のドアを乱暴にノックする。
河合は小さく太腿の内側を震わせて、薄い幕のかかった指を口内から離した。
唾液に十分に濡らされたそれはそのまま薄く透明な糸を引いて、ゆっくりと下腹部の方に降りていく。
どこかおぼつかない仕草で、十分な質量を持った熱の塊に濡れたそれを広げて被せていく。
そんな仕草すらももどこかくすぐったそうにしながら、塚田は僅かに上半身だけを起こす。
上に人を載せたままで苦もなく、むしろ笑顔すら載せて動くその様がらしいとも思う。

「はい、じょうずじょうず」

耳元で呟かれるふわふわした声に思う。
自ら腰を上げてその熱の塊を身の内に沈めていきながら、その熱さに灼かれながら、思う。

「河合はいいこだね。俺らの言うことなら、なんでもしてくれるもんね」




だっていったい何をすればいいのか、何ができるのか、未だわからないから。
この四人でいるために。
この四人でずっといられるために。
この身とこの心を捧げる以外の、いったい、何が。










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なんかもう言い訳のしようがないくらい普通にやってしまっておりますが。
塚河で濡れ場書くのなんて初めてなのに、初めてでこんなんて・・・。
ていうか塚ちゃん・・・。
まぁ次回以降普通にトツと五関さんもこんな感じになるとは思いますけどねー。あーあ。まぁ雰囲気はそれぞれ違うけども。
とりあえずテーマは「A.B.C.による河合郁人の共有」であり、「A.B.C.に自らを捧げる河合郁人」でもあるわけで。
好きなものはA.B.C.と堂々と言ってしまえる、メンバーのためならなんでもできると言わんばかりのフミトを見ていると、こんな妄想が止まりません。
あの子は周りの子みんな大好きって感じだけど、やはりメンバーはそれでも特別というか、自分から気軽に触れない分の凄く深いものがあるんじゃないかと思ってしまう。
そこら辺を最年少リーダー就任という衝撃的萌えエピソードと絡め、成人したというこの重大要素も絡め、ドロドロとやっていこうかと。
わとさん、メンバー大好きメンバーのためならなんでもできる!みたいな子って割と最萌えな存在なのよね・・・(目を逸らし)。
と言う風に勝手にフミトをそう理解しているだけですけども!

今更ですが、どれか一つのカプしか許容できないという方は気分が悪くなるだけだと思うのでご注意ください。

いやしかし書いてて楽しいのは否定できない(死んでください)。
(2008.2.7)






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