4.探り合い
「・・・うーわ朝から見たない顔見たわ」
「ご挨拶やなー」
「朝見る顔やないねんオマエ」
「これでも仕事やねんからそう言いなや」
「オレかて仕事やわ」
「なん、今日は撮影か?」
「おう」
「もうすぐ新曲やもんな。最近どこ行ってもかかってるわ、お前の曲」
「そらどーも。・・・そういうオマエこそ、いまさらグラビアの仕事なんぞ引き受けてどういう風の吹き回しかと思ったわ」
「あ、やっぱ知っとったか」
「知らんわけあるか」
「そらそうやな。同じ事務所の後輩やもんな、あの子は」
「そういうことや。・・・なんでキミなん?」
「キミ・・・?」
「ああ。・・・裕のことや。本名は横山侯子言うねん。響きも字面もやぼったいからて言うて社長がつけた芸名や、裕は」
「なーるほど。そうかー。でも侯子も可愛い思うけどなぁ」
「・・・そんで、なんでキミやねん」
「なんでて・・・」
「知らんとでも思ってんのか?・・・オマエ、自分であいつ撮りたいて社長に直談判したんやて?」
「・・・ようご存知で。すばる、新曲リリースで忙しいんとちゃうん?情報早過ぎやわ」
「余計なお世話や。あいつはオレの妹分やからな」
「おー珍し。孤高のロッカー渋谷すばるの発言とは思えんわ」
「茶化すな」
「んー・・・まぁ、色々あってん」
「オマエこそ珍しく濁すやんけ。・・・フン、惚れでもしたか?」
「・・・さぁ?そこら辺は企業秘密てやつや」
「ちっ、ほんまうっとうしいやっちゃな。ええかオマエ、キミに余計なちょっかい出しよったら承知せぇへんぞコラ」
「渋谷さん、判っとるでしょ?俺は被写体には絶対手ぇ出しませんー」
「・・・ま、それがカメラマン村上信五の言葉なら信用したるわ」
「そらありがと。信じて貰えるんがそこだけってのがちょお引っかかるけどな」
「あたりまえやろ。そうでなきゃ女関係でオマエを信用するヤツなんぞ誰もおらんわボケ」
「あははー。そら自分でもそう思うわ」
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