9.味方だなんて言わないで
「おはようございまーす」
「おーおはよう裕ちゃん。今日は珍しく早いねんな?」
「・・・いつもギリギリみたいな言い方せんといて」
「や、実際いつもギリギリやん。マルちゃんが言うとったでー?裕さんは朝が苦手なんですよ〜て」
「・・・やってねむたい」
「あはは、そら朝はねむたいわなぁ」
「撮影、なんでいつもこんな早いんやろ」
「あー・・・そら昼とか夕方はだいたい他ので埋まっとるからなぁ。
たとえばこのスタジオならミュージシャンとかも使うこと多いし」
「あ、すばる?」
「おん、せやね。すばるもそうや」
「ええなぁすばる・・・」
「まぁあのくらい売れっこになればな」
「亮もすばるのファンやねん」
「お、そうなん?」
「めっちゃ好きやねんて。アルバムも全部持ってるし。部屋にポスターとか貼ってあるもん」
「ほんまに?すごいなー。じゃあ、裕ちゃんがすばると知り合って喜んでるんとちゃうの?」
「まぁ・・・せやな・・・」
「ん?そうでもないん?」
「あんま、仕事の話はせぇへんようにしとるから」
「・・・そっか。亮くんは裕ちゃんの仕事にええ顔せぇへんのやね」
「しゃあないねん。亮が怒るんもわかるし。実際学校でもからかわれとるみたいやし・・・」
「でもそれは裕ちゃんのせいではないやろ?」
「ええねん。ほんでも俺ら仲はええし。・・・二人っきりの姉弟やもん」
「・・・なぁ、裕ちゃん?」
「ん?」
「ほんでも辛い時とか、ない?」
「なんでそんなん訊くん」
「んー・・・そういう風に見えたから」
「・・・そんなん言わん」
「俺には言うてくれへんの?」
「そんなん誰にも言わん」
「言うたってええねんで?」
「言わんもん・・・」
「俺が聞くから」
「言うたら、我慢できんくなるもん・・・」
「我慢なんてせんでええよ」
「・・・あほや。あんたカメラマンやんか」
「カメラマンやけど心配やから」
「そんな心配いらん」
「俺が心配したいねん」
「あほちゃう」
「あかんな裕ちゃん。・・・今更知ったん?」
「・・・おっさんのあほ」
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