11.こんな気持ち知らない










「・・・おそいっ」
「ああ〜もうちょっとやと思うんですけど〜」
「なんやねん!遅刻やんか!」
「や、なんや前の仕事が押しとるそうなんで・・・」
「そんなん関係あらへん!遅刻は遅刻やーっ!」
「裕さん裕さん、もうちょい我慢してください〜」
「いややっ帰るっ」
「もうちょっとですから〜!あ、お菓子いります?ジュースもありますよっ?」
「うっさい!子供やないねんから!」
「裕さん〜〜」
「・・・こら、あんまマネージャーさん困らしたらあかんよ?」
「あっ、村上さんっ。よかったっ。お疲れ様ですっ」
「や〜マルちゃんこっちこそ遅なってごめんなぁ?」
「・・・・・・ほんまや。遅刻や。大遅刻や」
「おん、ほんまにごめんな。・・・あ、マルちゃんもう大丈夫やで。あとはこっちでやるから」
「あ、じゃあお願いしますね。では失礼します」
「・・・・・・」
「裕ちゃん、怒ってる?」
「・・・遅刻きらい」
「おん、せやな。遅刻はあかんよな。でも裕ちゃんかて遅刻するやんか」
「俺はええねんっ」
「あら、そうなん?」
「そうやっ」
「まぁ、裕ちゃんはかわええもんなぁ」
「関係あらへんっ」
「そない怒らんでって。ほんまこれは俺が悪かったから。後でなんか美味しいもん奢ったるし。な?」
「・・・さいあくや」
「・・・裕ちゃん?」
「俺、今日めっちゃはよ来た」
「え・・・?」
「いつもより20分も早く来た」
「な、なんで?」
「・・・しらん!」
「しらんて・・・」
「あんたいつもはよ来とるからっ!・・・たまには、俺も来てみよ思っただけやっ」
「・・・ん、そか。そっか」
「俺、あほみたいやんか。俺の睡眠時間かえせやっ」
「おん・・・ほんまにごめん。もう絶対、二度と遅れへんから」
「・・・うそや。絶対またあんねん」
「もうせぇへんて」
「うそや。大人はうそばっかりや。どうせまた仕事が押しとるー言うて遅れんねん。・・・絶対またすんねん」
「誓うから。もう二度とせぇへん。今度また仕事が押しそうになっても、こっち優先して来るから」
「・・・・・・ゆびきり」
「ふふ、ゆびきりな。・・・ほら」
「ん・・・おっさん、手がごついなぁ」
「おっさんやからねぇ」










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